コラム「チルチルミチル」

2020/8/15
非営利活動法人 設備システム研究会
三木秀樹


私が初めて施工図を書くことになったのは、入社2年目の時だった。屋上の冷却塔周りの配管の施工図だったが、どーやって書いてよいかサッパリ分からず、1ヶ月も放置することになって、最後は先輩が呆れてササッと書いた。冷却塔周りの配管なんて、冷却水管の往還2本、補給水管1本、排水管1本しかないし、周りの障害物も少ないんだから、今ならササッと書けて当たり前だと思うけど、当時はそれができなかった。いやぁ、恥ずかしかったなぁ。
でも、それから二年もすると、施工図をフツーに、つまり早くキレイに書けるようになって、別の先輩が皆の前で誉めてくれた。いやぁ、うれしかったなぁ。
それにしても、なぜ施工図を書けるようになったかと言えば、自分なりの書き方を会得{えとく}したからだ。書き方とは、こういう場合にはこうするという条件と処理のルールだ。そして、書き方を会得するとは、このルールをたくさん覚えることだ。
では、このルールを機械に覚えさせればどうか。ルールはプログラムでは「IF 条件 THEN 処理」のように書ける。つまり、この「IF 条件 THEN 処理」をたくさん並べれば、機械が施工図を書いてくれるはずだ。
今、私が配管やダクトを自動で書くために使っているルールは、ほんの少しだけだ。これでは、「オレさまの施工図が、そんなに簡単に自動で作れるはずないね」とおっしゃる人は納得してくれまい。
では、そのたくさんのルールはどこにあるのか。今、バリバリと施工図を書いている人のアタマの中にはあるに違いない。でも、一般に、人はそのルールを吐き出すのが苦手なんじゃないかと思う。なぜなら、人は条件に直面して初めて処理を思い出すようになっている、つまりイベントドリブンであるような気がするからだ。技能伝承が難しいってのも、一つはそーゆー理由じゃないかな。
うーむ、残念、手っ取り早くってわけにはいかないか。と思ったら、ふと閃いた。そうだ、そういうルールをまとめたものが、当会が発行している「べからず集」じゃん、と。まさに、青い鳥だな。
写真 「べからず集」
「べからず集」に書かれたルールを、全て「IF 条件 THEN 処理」に書き換えれば、「オレさま」にも納得していただけるような、かなりマトモな施工図を機械が書いてくれるんじゃないかな。しかも、ルールは公開されているから、「ブラックボックスは信用できん」と言われることもない。これでまた自動化に一歩前進だ。やったね。
でも、ルールがたくさんあるから、作業が大変。なので、誰か一緒にやってくんない?
図 「べからず集」の「IF 条件 THEN 処理」化